インボイス

Genre:ビジネス/税務・会計

著:酒井 富士子
監修:西原 憲一

出版社:インプレス

発売日:2023年7月

評価:

評価 :5/5。

概要

令和5年度から本格導入されたインボイス制度の成り立ちから、消費税そのものの仕組み、そして具体的な手続き方法までを、マンガと図解でわかりやすく解説しています。
制度の基本だけではなく、「登録申請」「経理処理」「確定申告」など実務上必要なノウハウもしっかり取り扱われており、ケース別のアドバイス(職種別・年収別)も豊富です。

特に、インボイス発行事業者になるかどうかの判断基準や、登録後の実際の使い方、経費との関係など、自営業者や個人事業主が具体的に迷いがちなポイントを丁寧にフォローしている点が分かりやすいです。
また、図解が多用されており、制度を初めて学ぶ人でも「論点を見失わずに読み進められる」構成になっています。

【読むと得られるメリット】


マンガと図解でよくわかる インボイス 消費税の基本と手続きの仕方がわかる本 [ 酒井 富士子 ]
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インボイス発行業者になるかどうかの判断は、取引先が企業(=課税事業者)中心か一般消費者(消費税の申告・納税なし)中心かで判断する

p28
【感想】
本書は、インボイス制度を視覚的に理解できる点が非常に分かりやすく、特にマンガ部分では実務で起こりがちな「取引先からインボイス発行を求められる」「免税のままでいるべきか迷う」といった現実的な悩みが描かれており、制度が“机上の話”ではなく“日常に直結するもの”だと実感させられました。

特に以下の点は、実務上の重要な注意点として理解しておく必要があると感じました。

インボイスには「絶対に必要な7項目」があり、1つ欠けるだけで無効となる可能性がある。
  ①インボイス発行事業者の氏名または名称
  ②登録番号
  ③取引年月日
  ④取引内容(軽減税率の対象品目がわかるように記載)
  ⑤税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)と適用税率
  ⑥税率ごとに区分した消費税額等
  ⑦書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

端数処理は「税率別の品目の合計」に対して行う。
  →10%と8%のそれぞれで合計を出し、消費税額計算と端数処理を1回ずつ行う。

税税込1万円未満の少額取引は、インボイスの保存が不要(帳簿保存のみで仕入税額控除が可能)。
 (2029年9月30日までの経過処置)

自宅の一部を仕事場にしている場合、その分の消費税控除は不可。
 (所得税では「家事按分」ができるが、消費税では認められていない)

口座振替で「毎月継続して行われる取引」(例:水道、光熱費)については、インボイスがなくても仕入税額控除が認められる。
 ただし、帳簿付けは必須。



また、制度が始まったばかりのため経過措置が多く、今後も変更点が控えていることにも触れられており、「今理解して終わり」ではなく、「今後も継続して制度が変わる可能性がある」という前提で知識を持つ必要があると強く感じました。

2026年9月30日:「2割特例」の適用廃止
 ※ 2割特例 … 納税額を売上の2割として計算できる特例

2029年9月30日:少額特例の廃止予定。
 ※ 少額特例 … 1万円未満の取引はインボイス不要(帳簿保存のみで控除可)

※本書の内容および最新情報をもとに記載
(制度は今後さらに見直しが入る可能性があります)


本書は、インボイス制度を初めて学ぶ人にとって非常に有用で、特に図解とマンガで「抽象的な制度を具体的な場面に落とし込む力」が強く、理解が進みやすいと感じました。

実務の基礎知識だけでなく、今後制度がどう変わっていくかまで意識できる構成になっており、個人事業・フリーランスとして活動するにあたり、一度は読んでおきたい一冊だと思います。

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